荒木コンサルティング・オフィス 荒木俊弘のブログ

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管理職に必要なコミュニケーション能力の要所は、”本質に返答すること”です。

2015年5月24日3:52 PM

昨年、ある調査機関が全国600名の管理職を対象に「管理職の意識調査」を実施しました。
それによると、”自身に不足していると思うスキル”のトップは30.8%でコミュニケーション
能力でした。(2位は自己管理能力、3位は課題解決力)

「特に20代の女性管理職は41.3%とその傾向が高く、周囲とのコミュニケーションに何ら
かの課題を抱えていることが考えられる」とのことです。※出所:株式会社VSN公式サイト

「管理職クラスのコミュニケーション能力を高めて、社内の活性化につなげたい」
このような経営者の声を聞く場面が、私にも数多くあります。
コミュニケーション能力が管理職の仕事に影響する課題になっていることは事実です。

ただ、ひとくちにコミュニケーション能力といっても解釈は幅が広く、的が絞りにくい。
身近なところでは「会話力」、ビジネス場面では「交渉能力」、さらに踏み込んで「信頼関係づ
くり」。その他にも色々な解釈があります。

では、いったい管理職に必要なコミュニケーション能力の要所はどこにあるのだろうか?

ズバリ申し上げます。それは「本質に返答する」ことです。

私のコンサル経験をもとに、ひとつ例を挙げて説明しましょう。
サービス業(物販)の例です。

8店舗の運営責任者である山田課長(仮名)は、各店舗の業績低迷に頭を抱えていました。
店舗巡回は毎月2回欠かさず行なっているが、どうもマネージャーやスタッフのやる気が思うよう
にあがらず職場が沈滞ムードに陥っている。

早速、私が調べてみると店舗スタッフからこんな声が多く聞こえてきました。

「山田課長はいつ来ても同じような話ばかり。もっと役に立つ話が聞けたらいいのに・・・」

どうやら山田課長とスタッフとの間で、コミュニケーションがうまくいっていないようだ。

このような状況で、あなたがもし山田課長の上司だとしたら、どのようなアドバイスをするでしょ
うか?

①もっと多くの話題を準備してから店舗巡回しよう。
②会話のキャッチボールのテクニックを勉強しよう。
③「伝わる」話し方や説明法を研究してみよう。
④スタッフの相談役としてヒアリングしてみよう。

おそらくこのような内容になるでしょう。

コミュニケーションを考える時、まず浮かぶキーワードは「話題」、「会話」、「伝わる」「相談」
などが一般的だからです。もちろん大切であり、身につけるべき能力に間違いはありません。

ただ、このケースでは効果は低いでしょう。
理由は、表面的な対応にしかならないからです。
スタッフは「そうですね」、で終わってしまい自発的な行動に結びつかない。その可能性が高い。

もっと本質に返答しなければならないのです。

私のアドバイスはこれです。

◆「ほめる点を探す」というアドバス。その真意は?
・「店舗巡回でスタッフと面談する際、ひとつで良い、ほめることを実践してください」
・「ほめる点は仕事ぶりに関することに限定し、具体的に話してください」
これが私から山田課長へのアドバイスです。

目的は、次の2点です。

①スタッフの仕事ぶりを細かく観察する習慣を身につけること。
②スタッフの成長点を見つけ、それに対してアドバイスすること。

①について説明しましょう。
悪いところを探すのは簡単です。仕事ぶりを見なくても実績数字やその人のイメージでできてしまう。
しかし、ほめる点を探すのは容易ではありません。具体的でなければ相手に伝わらないからです。
面談でスタッフを「ほめる」という任務を課すことで、仕事ぶりを細かく観察する習慣が身につきま
す。

仕事ぶりの観察とはどんな場面か?
たとえば、
*お客との対話を見る。
*ミーティングでの発言を見る。
*作業の様子を見る。
*連絡や報告の仕方を見る。
*商品知識を確認してみる。
*電話対応を見る。
*上司への相談内容を確認する。
*スタッフ間での指導のやりとりを見る。・・・・・etc。
この他にもあるでしょう。手帳にチェックリストとして一覧表をつくり「今日はこれとこれを見よう」と
決めていくやり方でスムーズにすすみます。

さて、ほめる点がなかった場合はどうするか?

その時は、「課題を与える」のです。

たとえば、「作業時間を今より5分早くできるようにしよう」と課題を与え、次回訪問で確認します。
5分とはいかないが、3分早くできたならそこをほめる。つまりほめる点がない場合は、ほめる点をつく
れば良いのです。

「ほめる点を探す」、「ほめる点をつくる」この繰り返しが、仕事ぶりを見る習慣をつくります。

つづいて②です。
実は、これこそが「本質に返答する」ことなのです。

*本質とは、部下の成長点です。(行動の変化)
*返答とは、アドバイスです。(こうすれば今より良くなるという具体策の提示)

口下手でもいいんです。ぶっきらぼうでもいいんです。話題が少なくてもかまいません。
部下の成長点をほめて、アドバイスをする。これができればいいんです。

部下が「ニコッ」とほほ笑んで、行動に移る。

これに優るコミュニケーションはありません。

「部下の行動(やる気)を後押しする」。これが管理職に必要なコミュニケーションなのです。

先に挙げた一般的なキーワード「話題」、「会話」、「伝わる」、「相談」などのテクニックは後でも充分
間に合います。まずは「本質に返答する」こと。この要所を身につけましょう。

冒頭の調査結果にもある通り、
あなたの会社も”管理職のコミュニケーション能力”に少なからず問題を抱えているのではないでしょうか?

コミュニケーション能力に関係するいろいろな研修に管理職を参加させたり、社内で勉強会を開いたり努力
されていることでしょう。

しかし、「あまり成果が出ていない」と感じられている方は、ぜひここにご紹介した方法を実践してみてく
ださい。

今より違った効果を、実感できるでしょう。

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