荒木コンサルティング・オフィス 荒木俊弘のブログ

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販売計画や業務改善計画。うまく進め、結果を出す秘訣は「誰が」を疎かにしないこと。

2015年12月14日6:58 PM

 

思うように計画が進まない、結果が出ない。
誰もが、一度は経験しているはずです。

もちろん原因はいろいろあります。ただここで重要なのは、成否を分けるポイントを見つけることです。
ひとつひとつ思いつく原因に振り回されていたのでは、堂々巡りをくりかえしゴールを見失います。

私のコンサル経験から得たひとつの見解をお伝えします。
それは、成否を分けるポイントは「誰が」を疎かにしないこと。実はここが盲点になっています。

どういうことか。
まずは計画の流れをシンプルにとらえてみましょう。
計画は「誰が」→「何を」→「どうやって」→「いつまでに」という流れで成り立っています。
一見、複雑に見える計画も枝葉を取り除くと、幹は、この4つの流れになります。

たとえば、食品工場の5S運動に当てはめてみます。
5S運動とは、工場の生産性を上げるために「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」という視点で業務を改善
していく活動です。

「誰が」は、工場社員、パート。「何を」は、生産性向上。「どうやって」は、整理・整頓・清掃・清潔・
しつけ。「いつまでに」は、計画のスケジュール。

5S運動を進める計画書(多くはコンサル会社が提供するもの)には、「何を」「どうやって」「いつまでに」
が詳しく書かれています。

気づかれましたか? そうです。

「誰が」について。つまり工場社員やパートをいかにして計画に巻き込んでいくか、については書かれていない
ケースが多いのです。

ここが、管理職が計画を進める際の盲点になっています。

極端に言えば、社員が参加しないまま計画が進んでいく。こんな状況が現実に起きています。これではうまく進ま
ない、結果が出ないのも当然です。

では、具体的にどうすれば良いのか。
キーワードは、「説明の仕方」と「役割分担」です。

まずは、「説明の仕方」から。(5S運動導入の全社説明会を想定してください)

失敗するケースは、一般的な話で説明が始まります。パターンとしては、世の中の変化に関連した話。消費者意識
の変化に関連した話。大手企業の成功例などです。

ここから、いきなり「何を」「どうやって」の各論に進んでしまう。これでは社員のやる気を誘うことはできませ
ん。自分たちに差し迫っている問題だと感じられないからです。

成功するケースは、深く掘り下げて自分の会社になぜ必要なのかを説明する場合です。
「高品質と安全性がよりクローズアップされる今の時代。必要なのは徹底した品質管理と生産性の向上です。」

「品質管理をみた場合、わが社のレベルは5段階評価でいえば3程度。改善の余地があります。3という評価数値
はここ3ヶ月間社長と私(部長)が現場を見続け、社員やパートさんとヒアリングしてきたうえでの分析結果です。」

「また生産性は、ライバルである3つの会社と比較した推測値ですが10%程度わが社が低いと判断しています。
10%の改善は、今のメンバーなら充分できます。これは経理課も交えて話し合ってきた結論です。」

・・・さらに話を、具体的に現場へ、現場へ、と掘り下げていきます。

ポイントは、社員にとって職場の問題が具体的に示されていること。さらにその事前調査と話し合いが充分なされ
ていること。この2点です。
「何をやるか」の前に、「なぜやるのか」を必死に語ることで、社員に参加意識が生まれてくるのです。

しかし、これだけでは、まだ行動に結びついていきません。

そこで必要なのが「役割分担」です。

組織の中で自分に役割が与えられる。これは社員のやる気を行動に結びつける大切な要素です。
では、どの部分で役割を与えるのか?

5S運動では整理・整頓・清掃・清潔・しつけ。この部分です。つまり「どうやって」のところです。

さて、社員に役割を振り分ける際、大切なポイントが2つあります。
ひとつ目は、任務を明確にすること。ふたつ目は、ゼロベースで考えること。この2点です。

 

それでは”任務を明確にする”からお話しします。

整理・整頓・清掃・清潔・しつけ。たとえば、「しつけ」。任務はなんでしょうか?
ニュアンスは分かります。しかし今一つしっくりこないですよね。何をすれば良いかが。

では、このようにすると、どうでしょうか?

「しつけは、整理・整頓・清掃・清潔が日々現場で実行されているかチェックする。そして、うまくいっていない
ところは速やかに担当者と原因を話し合い改善策を決めて実行する。しつけの担当者は整理・整頓・清掃・清潔が
現場で習慣化するよう指導・改善することが任務です。」

これで何をすれば良いか、任務は何か、が明確になりました。
役割についた社員が迷うことなく行動できる状況をつくる。これが役割を明確にするということです。

次は”ゼロベースで考えること”についてです。

役割分担を決める時は、まず第一に社員ひとりひとりに対する先入観を捨てることから始めます。ゼロベースで考
える。この視点が必要です。

「A君は、普段からかたづけや段取りがうまい。だから、整理・整頓のリーダーにしよう。」
このように”普段から〇〇だから△△だ。” これが先入観です。

ゼロベースで考えてみましょう。
A君の強みはなんだろう?どの役割が適任だろう?確かにかたづけや段取りがうまい。しかしそれだけだろうか?

そういえば、A君がかたづけや段取りなどを後輩や新人パートさんに教えている場面を何回か見たことがある。と
ても、上手にていねいに教えている。その後の相談にも親身になってのってあげているようだ。

むしろ、しつけのリーダーになって、整理~清潔までの指導と定着に力を発揮してもらった方がA君の強みを活か
した適任かもしれない。

このようにしてゼロベースから考えを巡らす作業をひとりひとりの社員に行ないます。結果、新しく強いチームが
できあがります。

さらに付け加えると、この作業を終えた時点で社員とのミーティングを行ないましょう。「どの役割をやりたい
か」社員の意見を聞いていきます。

そこであなたの考えと社員のやりたいこと、この一致点が役割を決める落としどころになります。もし、一致しな
かった時は、あなたの考えを丁寧に説明し、本人の納得を得たうえで役割を与えてください。

「役割分担」は、ややもすれば日常業務の延長線上で安易に決められがちです。しかし、これは社員の行動を方向
づける重要な要素です。手は抜けません。

”任務を明確にし、ゼロベースから考え、役割を与える”ひとつひとつを確実にやりきりましょう。

「誰が」を疎かにしない。

これは、私がコンサルで実践し、成果を実感した方法です。ご参考になれば何よりです。

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