たとえば、店舗のマネージャーが、「マネージャー研修」に参加する。そこでは、計
数管理や販売管理、スタッフ管理や教育法、衛生保安などを学びます。
「学んだことのひとつでも職場で実践して成果に繋がれば」というのが送り出した側
の思いです。
しかし、職場に戻り、何かが変わったということもなく、昨日までのルーチンワーク
が、今日も繰り返される。多くはこのパターンではないでしょうか?
これではコストパフォーマンスが低すぎます。
中小の会社経営者にとっては、費用と時間の投資に敏感にならざるを得ません。
どこに問題があるのでしょうか?
本当に必要なのかを考える。
ある町役場では、職員研修費を倍増し、外部研修への参加を積極的に行っています。
ただし、本人からの要望があること。さらに何を学んでどう職場にフィードバックで
きるかを申告させて、参加への決済をしています。
こうすることで、職員の町民サービスレベルが上がり、現場で活かされている例もあ
ります。
ここで重要なのは、その研修を、本人が必要と考えているかという点です。
「毎年行なっているから」「上司の命令だから」という形式的な参加ではなく、本人
が必要と考えているかどうか、ここが研修を現場に活かすポイントになります。
ただし、新入社員の研修は少し様子が違います。
学生時代のアルバイトとは違い、「会社員」という立場になります。立場が変われば
目にする世界も新鮮に映ります。モチベーションは高い状態です。
研修で何かひとつでも「気づき」があれば、そこが仕事に繋げるスタートになります。
この場合は必要性よりも、まずは体験することに価値があります。
★対応策として
慣例的に行っていた研修への派遣で効果が得られてない場合、思い切って申告制に切
り替えることも必要です。
たとえば、会社が用意した年間の研修メニューを社員に示して、参加したい人に申告
してもらう。
その際、どんな必要性があり、どう現場で活かしたいかを提示してもらう。それを会
社が認可あるいは却下するというやり方です。
ただし、忘れてはならないことがあります。それは、上司が部下に向けて個別に必要
性をアドバイスしていくという働きかけです。
申告制が、単なる決済の機能に終わってしまえば”本末転倒”となってしまいますので
注意が必要です。
研修はプロセスと捉える
研修は、「仕事力を上げるプロセス」と考える。そうすると効果は上がります。
ひとつ例をあげて説明します。
マネージャー研修に参加する二人の新任リーダーがいます。
Aリーダーの場合。
研修を明日にひかえ、たまっている仕事を残業して終わらせ、翌日研修へ参加する。
帰ってくると、研修内容や感想を上司に報告し、日々のルーチンワークに戻っていく。
Bリーダーの場合。
研修パンフレットに目を通すと、「生産性の算出から分析までの手順とポイント」と
いう項目があった。日頃から生産性に対する意識が低いと上司から言われ、どうすれ
ば良いか悩んでいた。
そこで、決めた。研修では、この「生産性」についてしっかり学んでこようと。
研修から帰ると、早速教わった手順通りに過去3ヶ月分の分析をして改善の行動プラ
ンをたてた。よし、やってみよう!
効果はどうか。当然Bリーダーの方が上がります。
違いはどこにあるのか。それはAリーダーとBリーダーの「研修」の捉え方です。
Aリーダーは、研修を「行事」として捉えています。極端に言えば「催事を見学する」
この感覚です。
一方Bリーダーは研修を「プロセス」として捉えています。仕事力を上げるためのプロ
セスです。
プロセスは、前後の課題(インプットとアウトプット)と結びつくことで成果が期待で
きます。単独ではうまく機能しません。
Bリーダーの例でみると、
(前)何を学ぶか決める ⇒ (プロセス)研修 ⇒ (後)行動プラン
前後の課題と結びついていることが分かると思います。
一方、Aリーダーは、
(前)日常業務 ⇒ (プロセス???)研修 ⇒ (後)日常業務
前後に課題がないのでプロセス(研修)との結びつきがなく、効果は期待できません。
★対応策として
実際には、Bリーダーのように理想的なパターンはごく僅かです。なので、会社のひと
工夫が必要です。
それは、前後の課題を考え、記入させるツールを取り入れて進めることです。
内容を追って説明していきます。
慣例的な研修への派遣をそのまま継続するとしましょう。
そこで、前後の課題を考えさせるツールの使用を新しくスタートさせます。
ツールは、本人が書き込める書面フォーマットがベターです。(確認と振り返りがしや
すいため)
書面フォーマットは、シンプルに項目を絞ります。
例:A4用紙1枚。
項目1.この研修で何を学ぶか具体的に記入してください。
項目2.研修後、どう行動して役立てるか行動プランを立てましょう。(研修後に
提出してください。)
このくらいシンプルにすると、より実用的になります。多くを書かせないことがポイント
です。
研修を通した「教育のレベルアップ」や「コストパフォーマンス」について考えるきっか
けになれば何よりです。
※関連記事