荒木コンサルティング・オフィス 荒木俊弘のブログ

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人事考課を中小企業でうまく進める。カギは「育成して評価する」という視点に立つこと。

2016年8月2日6:07 PM

人事考課をこれから導入する際、専門書を数多く読んだり、コンサル会社の研修に参加したり、さらには
他社の成功事例を研究するなど、日々努力されている方が多いと思います。

しかし、そこで注意してほしい点が1つあります。
それは、査定テクニックに関連する事に視点を集中し過ぎないことです。たとえば、賃金表や等級表の仕
組み・賞与査定の仕組み・採点の仕組みなどです。

人事考課をこの視点から進めると、どうなるか。

管理職を例に、私の経験から言うと「日常業務で人事考課は後回し。査定の時期になってドタバタと急い
で評価や採点をかたづける。仕事が増えたなぁ・・・と頭を抱える。」こういう状況にたどり着きます。

制度がうまく進まない典型的なパターンです。人事考課が査定の道具で終わる。社員は納得しません。

では、どういう視点が必要なのか。
それは、「育成して評価する」という視点です。あえて申し上げます。これしかありません。
管理職がこの視点に立ちブレずに進めることができるか、ここが成否の分かれ目です。

なぜか。

あらためて、人事考課の目的と役割を確認するとはっきりします。
人事考課制度の目的は、「社員と組織の生産性向上」です。では、生産性を上げるにはどうすれば良いのか。
人事考課制度は、3つの役割で実現への道筋をつけています。

第1の役割・・・高いレベルへ”人材を育成”していくこと。
第2の役割・・・その結果を給与やボーナスの”査定”に反映させていくこと。
第3の役割・・・中期スパンで経過を分析して”適材適所”の部署や役職に配置し組織を強化すること。

つまり、第1の役割が生命線になります。人材のレベルが上がらなければ、査定や適材適所に力を入れても
目的は果たせません。冒頭にお話しした査定テクニックの視点だとうまく進まない理由はここにあるのです。

では、管理職が「育成して評価する」視点を理解し、実践するために何が必要なのか?

大切なのは、教育と育成を混同しないことです。

私は関係先の管理職の方と話の中で、よくこんな質問をします。
「社員の育成に、ご苦労なさっていませんか?」
すると多くの方が、「技術研修や販売研修、さらには新入社員研修など色々な研修に力を入れて頑張ってい
ます」というお話しをされます。

しかしこれらは、社員が何かを教わって、「わかった」という話。いくら理解しても、訓練しても実践は仕事
の場が勝負です。教育と育成を混同し成果を出せないでいるケースが意外と多いのです。

育成とは、社員がわかったことを「仕事の現場で使いこなし成果を出す」よう本人の成長を支援することです。
この違いを意識することが何よりも大切です。生産性向上との接点は、教育のその先、育成にあります。

では実際にどうすれば良いのでしょうか。基本は、人事考課制度の評価シートを使って身につけることができ
ます。

仮にガソリンスタンド経営会社の評価シートを想定します。
評価項目のひとつに「お客様の良きアドバイザーとして信頼される接客ができる」とあります。

5つのステップで育成のサイクルをつくります。

ステップ1・・・数値目標をつくる。
「信頼される接客」を測るものさしをつくり、数値化します。この場合、ものさしは車検獲得(高額であり
マイカーの安全を任せるという信頼のバロメーターになる)で数値化は指名予約20件獲得とします。

ステップ2・・・通過点目標を決める
直近の実績を見て、まず手の届く通過点ラインを決めます。仮に現状は2~3件であることから考え10件
とします。

ステップ3・・・現状をチェックして活動内容を決める。
現状で欠けている部分を指摘し、具体的なやり方を2~3通り教える。そのうえで本人が活動内容を選択、
もしくは考え出す。

ステップ4・・・実施状況とお客様の反応を本人が記録する。
効果が出ているかどうかは、実施状況とお客様の反応から見極めが必要です。さらには、上司が現場で見て
客観的に判断することも重要です。

ステップ5・・・目標への進捗を確認し、改善策を一緒に考える。
進捗が思わしくない場合、本人には見えていない部分は何かを考えアドバイスします。改善策はできる限り
一緒につくることが本人のやる気につながります。

以上が育成のサイクルです。ステップ1から5まで進み、2に戻ります。クリアできたら新しいテーマで同
様にサイクルを回す。これが基本です。

ただし、実践にあたっては次の点に注意してください。どのステップから始めるかは、社員の現状で変わる
ということ

たとえば、いつも同じところでつまずいて成果が出ない社員にステップ1から始めても効果はありません。
数値目標に対して「気が重いなぁ」とやる気が下がるだけで終わります。この場合はステップ3から始める
ことが有効です。

つまり、ステップのどこから始めてもよいのです。大事なのは、やる気を引き出すのはどのステップからか
、この見極めです。

この育成サイクルが、なぜ人事考課をうまく進めることにつながるのか。その理由は、考課する上司とされ
る部下に「納得感」が生まれるからです。

上司は部下の仕事の様子を把握でき、部下は自分の力量を素直に知ることができる。そこに納得感が生まれ
人事考課制度への参加意識が高まります。このことが土台にあるか、ないかの違いが大きいのです。

育成サイクルの回し方は、社員とのマンツーマンが理想ですが人数が多いと対応がむずかしくなります。
そこで、各セクションのリーダーを対象にしたり、リーダーを集めての育成会議を月一定例化するなど工夫
すると良いでしょう。

これから制度に取り組む方、あるいは今の制度がうまく進まないという方は、ぜひ参考にして実践していた
だければ幸いです。

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